名古屋地方裁判所 昭和40年(ワ)1462号 判決 1965年7月20日
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告等の負担とする。
事実
原告訴訟代理人は「被告等と訴外〓野光春間の名古屋地方裁判所昭和三九年(ヨ)第一、八九〇号不動産仮差押申請事件につき、同裁判所が昭和三九年一二月二二日別紙物件目録記載の物件に対してなした仮差押の執行はこれを許さない。訴訟費用は被告等の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として、
「一、別紙物件目録記載の不動産は、原告等先代亡〓野春光の所有であつた。
二、昭和三一年八月二八日右春光が死亡したところ、同人の相続人七名中原告両名を除く全員(訴外〓野光春を含む)は昭和三一年一〇月二九日名古屋家庭裁判所にて相続放棄の申述をなし同年一一月二〇日これを受理せられたので、前項不動産は残る相続人の原告両名の相続財産に確定した。
三、被告等は訴外〓野光春に債権を有するとして別紙物件目録記載の物件(光春の持分と称する九分の一)の仮差押を名古屋地方裁判所に申請し、昭和三九年一二月二二日同裁判所より同年(ヨ)第一、八九〇号事件仮差押決定を得てこれを執行したが、右物件は訴外光春の所有ではなく原告両名の所有であるから、この仮差押は不当である。
四、よつて原告等は請求の趣旨記載の判決を求む。」
と述べた。
(立証省略)
被告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、答弁として、
「第一項認める。第二項不知(春光の死亡は認める)。第三項被告等が仮差押の申請をなしこれが決定を得て、執行をしたことは認めるが、その余は争う。第四項争う。」
と述べた。
(立証省略)
理由
成立に争いのない甲第一、二号証、同第三号証の一乃至三により被告等が訴外〓野光春に対する債権に付き原告等が相続した別紙物件目録記載の物件につき仮差押をなしたこと及び訴外〓野光春が亡〓野春光の死亡によりその相続を放棄したこと、右相続放棄が登記されてなかつたことは争がない事実である。
本件物件の相続人たる原告等の相続財産につき被告等が仮差押をなしたのは、訴外〓野光春の相続放棄の登記なきためであつて、被告等は民法第一七七条にいう登記なくして対抗しえない第三者であるからである。しかも、右相続放棄は民法第一七七条にいう物権の得喪変更に該当し、相続放棄即ち他相続人の相続による財産取得が不動産登記法第一条による不動産物権の設定、保存、移転、変更、処分の制限又は消滅については登記を要するというのに該当するものである。
即ち訴外〓野光春の相続放棄による原告等の本件物件についての同人の持分の取得については被告等が本件仮差押をなすまでは全く登記が行われていなかつたのであるから、被告等に対抗しえない。
よつて原告の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(別紙)
物件目録
稲沢市大〓町門前屋敷五壱七番
一、田 壱畝弐弐歩
稲沢市大〓町蛭池八参八番
一、田 参畝壱九歩
稲沢市大〓町蛭池八五三番
一、田 四畝〇弐歩
稲沢市大〓町馬場六四弐番
一、田 四畝弐〇歩
稲沢市大〓町蛭池八五参番弐
一、田 七歩
稲沢市大〓町古江参四六番
一、田 壱〇歩
稲沢市大〓町門前屋敷四六六番弐
一、畑 六歩
稲沢市大〓町過古九七弐番
一、田 弐壱歩
稲沢市大〓町蛭池八参四番
一、田 参畝弐壱歩
稲沢市大〓町古江参四五番
一、畑 壱畝〇参歩
稲沢市大〓町古江参四五番壱
一、田 弐畝〇参歩
稲沢市大〓町七廻り五参弐番
一、田 弐畝壱六歩
稲沢市大〓町七廻り五参壱番壱
一、田 弐畝〇壱歩
稲沢市大〓町長田七五〇番
一、田 壱畝壱九歩
稲沢市大〓町蛭池八五参番壱
一、田 壱四歩
稲沢市大〓町蛭池八九六番
一、田 壱畝弐八歩
稲沢市大〓町蛭池八九六番壱
一、田 弐五歩
稲沢市大〓町過古九七壱番壱
一、田 壱九歩
稲沢市大〓町下ノ町壱壱九七番
一、田 五畝壱壱歩
稲沢市大〓町茂田壱参九壱番
一、畑 五畝壱参歩
稲沢市大〓町中道壱五九七番
一、田 壱七歩
稲沢市大〓町高畑壱九壱壱番四
一、田 六合
稲沢市大〓町高畑壱九壱壱番五
一、田 壱参歩
稲沢市大〓町高畑壱九壱壱番弐
一、田 四畝〇七歩
稲沢市大〓町須ケ越弐四壱番
一、畑 壱畝壱壱歩
稲沢市大〓町須ケ越参〇六番
一、畑 参畝弐参歩
稲沢市大〓町寺西壱弐弐番
一、畑 参畝壱八歩
稲沢市大〓町寺西壱七四番
一、畑 壱畝壱四歩
稲沢市大〓町寺西壱五九番壱
一、畑 六畝〇八歩
稲沢市大〓町山浦壱八弐参番壱
一、畑 弐畝〇弐歩
稲沢市大〓町門前屋敷四六五番地家屋番号参八番
一、木造瓦葺平家建居宅
床面積 参八坪四合
一、木造瓦葺平家建居宅
床面積 壱四坪七合
一、木造瓦葺平家建物置
床面積 四坪
一、木造瓦葺平家建物置
床面積 壱〇坪五合
右各不動産につき債務者の持分九分の壱